看護師が行う業務は、保健師助産師看護師法によって「療養上の世話又は診療の補助」と定められています。
医師による診療は、医師のみしか実施できない「絶対的医行為」と、看護師が「診療の補助」として実施することができる「相対的医行為」に分類されますが、従来は両者の境界が厳密には規定されていませんでした。そこで、相対的医行為のうち高レベルな行為を明確に区別し、「特定行為」として位置付けました。
その特定行為とは、21区分38行為であり、この行為を実践するための必要な高度知識と技術を指定機関で学び修了認定を受けた看護師のことを特定看護師といいます。
超高齢社会を迎え、医療資源の限界がある中、国は今後の入院医療のあり方の見直しと在宅医療の推進を目指しております。そこに病床数の削減や医師や看護師不足も懸念されています。こうした中、多職種協働によるチーム医療の展開が必要とされ、特に看護師の役割拡大が重要な時代となりました。どのような役割かというと、難易度の高い診療の補助業務を、医師があらかじめ作成する「手順書」という包括的指示のもと実践するという役割です。入院でも在宅でも、医師の到着を待たず、患者の症状にあわせて必要な適切な処置ができる実践能力の高い看護師が増えると、症状が悪化せず、患者にとっても医療者にとってもメリットが大きいのです。
※厚生労働省HPより抜粋
特定行為区分の名称 | 特定行為 |
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呼吸器(気道確保に係るもの)関連 |
経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 |
侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
非侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
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人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 |
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人工呼吸器からの離脱 |
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呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 |
気管カニューレの交換 |
循環器関連 |
一時的ペースメーカの操作及び管理 |
一時的ペースメーカリードの抜去 |
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経皮的心肺補助装置の操作及び管理 |
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大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整 |
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心 嚢 ドレーン管理関連 |
心 嚢 ドレーンの抜去 |
胸腔ドレーン管理関連 |
低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 |
胸腔ドレーンの抜去 |
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腹腔ドレーン管理関連 |
腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿 刺針の抜針を含む。) |
ろう孔管理関連 |
胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 |
膀胱ろうカテーテルの交換 |
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栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 |
中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 |
末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
創傷管理関連 |
褥 瘡 又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 |
創傷に対する陰圧閉鎖療法 |
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創部ドレーン管理関連 |
創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 |
直接動脈 穿 刺法による採血 |
橈 骨動脈ラインの確保 |
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透析管理関連 |
急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析 濾 過器の操作及び管理 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 |
持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
脱水症状に対する輸液による補正 |
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感染に係る薬剤投与関連 |
感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 |
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 |
インスリンの投与量の調整 |
術後 疼 痛管理関連 |
硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 |
持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 |
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 |
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持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 |
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持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 |
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持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
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精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 |
抗けいれん剤の臨時の投与 |
抗精神病薬の臨時の投与 |
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抗不安薬の臨時の投与 |
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皮膚損傷に係る薬剤投与関連 |
抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整 |
特定の行為を医師の指示を待たずにタイムリーに患者に提供することによって、患者の症状の回復が早くなります。患者の苦痛の軽減が早期に図れます。
医師の働き方改革が提唱される中、やはり、医師の業務軽減をしていかなければなりません。医師の業務が多く、現場にタイムリーに駆けつけることの限界もあります。医師の包括的指示を明確にし、信頼する特定看護師に業務をまかせることにより、医師の業務軽減と治療の遅れのジレンマも軽減されます。
常に患者の傍らで症状の悪化や回復を観察する看護師は、必要な処置治療を何より望んでいます。他の処置治療で業務をしている医師の到着を待つことなく、実践力の高い特定看護師が特定の行為を実践することにより医療者としての満足度が高まります。
臨床推論力、病態判断力などの医学的知識をベースとした看護実践が可能となり、生活支援や意志決定支援に積極的に取り組むことができます。更に、予測されるリスクに対して、タイムリーに対処できます。